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プラダ バッグ コピー編集

 あきらかに吹《ふ》っかけられた値段を、こんなに安くていいのかと大袈裟《おおげさ》に喜んで払い、極東の地へ連れ帰って——それから三年五ヶ月と八時間二十四秒もかけて、ユーダイクスを整備したのである。  そのときには、足も腕も、心臓も肺も残らず取り戻されていた。  世界中に散ったはずのユーダイクスのパーツを、男は根気良くかき集め、あるいは設計図を手に入れて自作したのであった。  俺は魔法を使えないからね、と男は笑っていた。  会社をつくる前に、魔法が使える弟子《でし》が欲しかったんだ。自動人形《オートマタ》の弟子なんて、ちょっと格好《かっこう》いいだろう。  子供っぽい笑い顔だった。  対して、弟子とは何かとユーダイクスは訊《き》いた。私は自動人形《オートマタ》だ。そのように遇《ぐう》すればいい。  うん、最初はそれでいいよ。お前が好きなようにいればいい。俺はそういう会社にするつもりだから。  そうして、ユーダイクスは〈アストラル〉に入った。|貸し出し魔法使い《レンタルマギカ》という男の仕事はやたらと忙《いそが》しかった。  やたらと大きな呪波|汚染《おせん》を片付けたかと思えば、翌日には怪《あや》しげな三流オカルト誌の原稿《げんこう》を書かされた。妙《みょう》ちきりんな猫《ねこ》好き陰陽師《おんみょうじ》の新人研修をさせられたり、時には〈協会〉と対立することさえあった。  ただ……妙に時間が過ぎるのが早かった。  それを『愉《たの》しい』と考える思考は、ユーダイクスにはなかった。  なかったが、確かにそこには——疑いようのない、心地《ここち》よい時間があったのだ。  そして、ある日、幻《まぼろし》のように消えうせた。  後は、語るまでもない話だ。  主《あるじ》をなくしたユーダイクスは、〈アストラル〉を出て、ヨーロッパに戻《もど》った。フランス首都郊外《こうがい》に買われたその屋敷《やしき》は、ずっと以前、男が〈アストラル〉の別荘《べっそう》として買った場所であった。
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